庭園材に使われる苔で、もっとも使われているのがスギゴケです。以前なら90%以上、今でも80%以上が造園業者により利用されていると思います。
 このスギゴケ、水をやっていれば良く育つという苔ではありません。植える場所を選びますし、放置していると丈を伸ばし続けるため、ときに刈り込みも必要になります。
 

■ 散水
夏の炎天下、乾燥して葉が閉じてると散水したくなるものです。冬の乾燥も気になります。散水は日々の重要な管理のひとつ。そのポイントは?
 夏の水やり・・・苔が生育するのは明け方、朝の陽射しと朝露を吸って成長します。強い陽射しは苔に厳しいためスギゴケは水分を放出し、葉を閉じてやり過ごそうとしています。この時の水やりが危険です。強烈な陽射しは広げた葉を赤く焼き、あるいは高温に蒸れを起こすかもしれません。これを何回か繰り返すことで苔は弱っていきます。水やりは夜明け前が理想ですが、たっぷりと夕方にやっておくのも良いでしょう。
 冬の水やり・・・南極でもギンゴケは自生しているそうで、寒さに強いのが苔です。冬は苔も冬眠しているような状態で、ほとんど生育はしません。生育しないときに散水の必要はありません。 
■ 日照
スギゴケやスナゴケは好日性と言われますが、これは炎天下でも育つという意味ではありません。散水のところでも説明しましたが、好日性と言われる苔に共通しているのは素早く水分を放出して、炎天下でも耐える能力が日陰性のコケよりも高いと言うことです。そして日当たりの良い場所は朝露に濡れやすく、朝露で苔は生育します。市街地や都市部ではこの夜露や朝露でびっしょり濡れることはあまりありません。市街地で日当たりの良い場所はスギゴケにとって何のメリットもないのです。市街地で植えるならば木陰のある半日陰。郊外なら朝露を遮るような樹木の下は避け、明るい半日陰が良いでしょう。

■草取りと徒長抑制
旺盛に苔が成長すると雑草も自然と抑えられるのですが、まきゴケや移植間もない頃は除草作業が必要になります。雑草を見つけたら小さな芽のうちに抜いて下さい。このときにどうしても苔を踏みつけることになります。苔の踏みつけは気になるところですが、スギゴケの場合問題はありません。草むしりの時にはゴム草履のように底の平らなものを履いて*作業をします。スギゴケの上を踏み歩くことで、コケの丈を抑える徒長抑制効果も期待できます。スギゴケは放置すると丈を10cm、20cmと延ばしやがて衰退してしまいます。踏みつけることで徒長を抑制し、コケの芽数を殖やし、苔庭としての美しさも維持できます。
 *作業時には苔に軽く散水をしておきます。乾燥しているコケは固く、踏みつけるとポリポリと折れてしまいます。

■雑草の芽が密生したときには除草剤が効果的です。スギゴケに無害といわれているのはグラモキソンですが、これは現在生産されていません。赤城物産のパラエキス6は同じように使えます。入手しやすいものでは日本農薬のプリグロックスLが使えます。しかし若干苔に薬害がでますので、通常より薄く希釈し、前もって狭い面積で試験散布をおこないます。作業は夕方、苔には集中してかからないよう手早く行います。

地方や地域によって苔の生育環境が大きく異なるのが冬です。日本海側では春まで雪に覆われ、北関東では乾燥した寒風が当たります。東京は冬でも暖かく、苔は青々としています。
■日本海側のように雪の多いところでは、苔も雪に覆われて春を迎えます。雪の下は苔にとって越冬しやすく、寒冷紗のように寒風からも守ってくれます。
■乾燥した冷たい風が当たるようなところでは、赤く焼けたり霜柱の影響もあり、スギゴケにとっては厳しい環境といえます。このようなところでは寒冷紗のベタ掛けが効果的です。
■霜柱でコケが浮き上がることがあります。春、霜柱が立たなくなってから鎮圧するなどしてコケを密着させます。かるく散水してから十分に踏み固めてやるといいでしょう。苔を引っ張ると簡単に持ち上がってしまうようなところは、コテや木槌で密着させます。ください。


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