苔植物に肥料は必要ありません。植物ですから肥料が必要と思われますが、用土から水分や栄養を吸収するような根を持たない苔植物には、少量の肥料でも影響が大きく、時に枯れてしまうこともあります。
肥料を与えた失敗例
お庭にスギゴケを植えられた方から、「夏の陽射しで元気がないのだが、どんな肥料をやればよいのか」と尋ねられ、「与えなくても大丈夫ですよ」と返事をしました。少しぐらい与えても大丈夫なのだろうと思われたようで、薄く少量の油かすを撒いたそうです。夕方には夕立があり、撒いた油粕が流れ溜まった場所ができ、翌日にはそのまわりのコケが赤褐色になったそうです。赤くなったコケもやがて回復はしましたが、少量でも与える必要のない良い例かと思います。
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どうして肥料を必要としないのか
コケは同じ隠花植物であるシダと比べてもつくりがとても簡単にできています。普通の植物が養分の多くを吸収する根をコケは持っていません。仮根と呼ばれる細長い細胞からできたものはありますが、これは体を支える程度の役目しかありません。コケはたくさんの葉緑体で朝夕のわずかな光や空中の湿度、炭酸ガスで養分をつくって(光合成)育ちますが、この仮根からはほとんど水分も栄養も吸収せずに*1育つことができます。このため少量の油粕でさえも、腐ったり蒸れたりすることで受ける害のほうが大きく、コケのための肥料は利がないといえます。
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肥料のかわりの栄養剤
肥料に含まれるチッソ、リンサン、カリ、マグネシウムなどを吸収はできないものの、微量でも徐々に長期間溶出するミネラル(リン、カルシウム、マグネシウムなど)はコケの生育に良いと言われ、葉の色が良くなるようです。少なくとも肥料を与えたときの根腐れのような害はないので、試してみてはいかがでしょうか。灰分が多いものにはミネラルも多く含有するようで、炭がこれに当たります。またオーキッドベースもミネラルの含有が多く、アサヒビールからのご紹介がありました。
ただし粗悪な炭には植物の生育を阻害する炭化水素類の残留があります。備長炭は灰分(ミネラル)が多く揮発分がとても少ない炭で、植物の根腐れ防止、発根を促進し、コケの生育*2にも期待ができる良い炭です。
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備長炭・オーキッドベース
いろいろな炭に含まれる灰分と揮発分を比較すると
市販燃料炭は揮発分がきわめて多く適しません。もっとも少ないのが備長炭です。オーキッド・ベースはアサヒビールが販売している培地資材で、ビール大麦の殻を高温で焼成したもので、備長炭と同等の木炭硬度20以上で含有ミネラルがきわめて豊富です。(アサヒビール資料より)。
コケ園芸でのミネラルを含んだ培地資材*3としてはオーキッドベースと備長炭をお勧め致します。
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*1スギゴケは茎に比較的発達した管があるようで、刈り取ったコケを束ねて水に浸しておくと一日ぐらいで水を吸い上げ葉を開くようになります。水に浸すことで生花の下草や装飾に利用することもできます。 |
*2圃場で試したところ、コケの生長に劇的な効果は見られませんでした。しかしこれは圃場でのコケの生育環境が良好であるため、いずれも良く育ち比較できるだけの違いが分からなかったためです。植物の活性によいといわれるものでは木酢液、、竹酢液、HB101、オーキッドベースなどがあり、いずれも圃場で試してみたところ、肥料のような生育障害はまったくありませんでした。生育良好なコケには不要かもしれませんが、生育不良のコケには効果が期待できます。 |
*3炭は培地資材、土壌改良材として使用されます。コケにとっては培地資材や用土と言うよりも肥料的な効果を期待しての使用となります。苔玉に混合するには、つぶ備長炭や中粒のオーキッドベースが使いやすいでしょう。またどちらも真密度が大きく(重く水に沈む)ので、苔玉の下の飾砂として使用しても生育に効果が期待できます。 |
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