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管理 − 目土入れ


目土の効果


芝草同様に苔の植え付けでも目地を埋め、根付かせるために目土を入れます。苔園芸では苔玉や盆景、テラリウムなどで目土を使うことがないため、苔に目土は必要がないように思われていますが、屋外での移植やまきゴケには効果のいちじるしいものです。苔植物は環境の変化に弱く、植え替え直後から変色することはよくありますが、上から目土を入れることで乾燥や日照の影響を受けにくくなります。またハイゴケのように剥がれやすい苔には重石の効果もありり、風で飛ばされたり雨に流されることも少なくなります。

はりゴケの目土入れ

はりゴケ(ベタ張り)の目土
大型のコケにはスギゴケのように立ち上がる苔とハイゴケのように横に広がる苔に分けられます。
ハイゴケのように横に伸びる苔は土の量が多いと苔が隠れてしまいますから薄めにします。ヒノキゴケやスギゴケのように大型で立ち上がる苔は厚目に入れるようにします。いずれも一回の分量は苔丈の1/2ぐらい。フルイを使って適度に乾燥した土をまくと簡単です。苔の上に残さず中にはいるように手でならしてやります。何回か水をまくと苔の中に土が入り安定します。
小型の苔は植え付けの時に少量ふるう程度でよく、入れすぎると生育を阻害します。

まきゴケの目土入れ

育苗箱やプランターを使ってまきゴケ(苔をほぐして表土にまく植え方)で苔を殖やすのに目土入れは必ずおこなうものです。目土せずにまきゴケした苔は、どれほど表土を湿らせても乾燥にさらされますし、散水のたびに水圧で苔が流されているようでは、まず新しい芽は伸びてきません。まきゴケでの目土は安定した湿度の提供と定着を助けます。分量ははりゴケ以上に少なめに目土入れをします。水やりをすれば少ない土ですからすぐに苔が露出してきます。最初は少量の目土入れを繰り返してます。苔が均等に頭を出したような状態で安定すれば、30日目ぐらいからポツポツと新芽が見られるようになります。苔の生育はとても遅いので、新芽が出始めても、それがすぐに密生すると言うことはありませんが、3ヶ月〜6ヶ月ほどで表土が緑色に見える程度にはなります。この間は新芽を乾燥させないように(ただし水のやり過ぎも良くない)注意してください。

手入れとしての目土

はりゴケ、まきゴケでの移植直後の目土とはべつに手入れ(管理)としての目土入れも必要になる場合があります。特に屋外では降雨による流出があると、やはり発芽はいちじるしく悪くなります。この場合の分量も大量に与える必要はありません。薄く均等な目土入れを必要に応じ繰り返すようにします。ある程度密生してくれば頻繁な目土作業の必要もなくなります。コロニーの形成により水分を蓄え、乾燥などの影響も受けにくくなるためです。安定して生育しているようでも、新しい芽の伸びが少ないようなら目土を入れてやります。

目土の条件 保水性と通気性

芝草は細土を目土としてまくだけですが、苔植物は種類、性質や大きさも様々なため、それぞれに最適な目土があります。しかし大きな苔にも小さな苔にも共通した目土の条件はあります。まず適当な保水力があること。小さく粉砕したまきゴケの苔は安定した水分があって初めて新芽を伸ばし始めます。水をやってもすぐに乾燥を繰り返すような土は適しません。そしてもう一つが通気性です。土の粒が小さいと乾燥はしにくくなりますが、通気性も悪くなります。通気性の悪い目土は苔がが過湿になり蒸れたり腐って発芽することができなくなります。目土には保水性と通気性のある土作りが必要です。

標準的な目土の作り方

目土に使う基本の用土。その基本用土の欠点をともなう改良用土。保水性や通気性をもたせる調整の用土をブレンドして標準的となる目土を作ります。基本用土は黒土や畑土です。改良用土にはピートモス。調整用土として川砂、鹿沼土・赤玉土を使います。もちろんこのほかの用土も使えますが、ここでは容易に入手できる素材で標準となる苔目土を作ることにします。
基本用土に黒土(または赤土・畑土などの単粒土)を50%。
改良用土にピートモスを20%
調整用土に川砂(または山砂)を20%
調整用土に赤玉土細粒または鹿沼土細粒を10%
これをブレンドして標準の目土にします。

黒土は団粒構造のある良質のものを使います。長く庭土として使っていたものは土の粒が小さくなっているかもしれませんし、ゼニゴケや地衣類、雑草の種が混じっており消毒が必要になります。手間を考えると購入された方が良いでしょう。ピートモスは湿地のミズゴケが堆積したもので腐葉土に似た性質があります。目土として腐葉土では小さな苔には適しません。ピートモスは手で良く揉んで細かく粉砕して混ぜます。ペーハー調整していないピートモスは酸性が強くなります。多くの苔は弱い酸性土を好みますが、ピートモスが多すぎても良くありません。またギンゴケなどアルカリ性を好む苔にはピートモスは入れない方がよい場合もあります。鹿沼土、或いは赤玉土は挿し芽用の細粒を使います。鹿沼土や赤玉土、川砂は肥料分をほとんど含みませんから、肥沃な土を嫌う苔には適しています。





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目土の調整

屋外では目土の効果はいちじるしく、標準的な苔目土を与えただけでも効果は期待できます。しかし芝草と違って数ミリの小さな苔から、10cm以上にも伸びる大型のコケもあれば腐葉土で生育するもの。岩の上や倒木に定着するもの。砂地を好む苔などその性質はさまざまです。さらに調整用土をブレンドするなどして適した目土を作ります。
以下では標準目土を元に調整用土を加えて、代表的な苔の目土を作ります。

大型のコケの目土の調整
スギゴケやヒノキゴケ、コウヤノマンネングサなど大型のコケの多くは林の中の腐葉土質の場所で見られます。岩や倒木など土のないところでの生育が難しい苔ですから、目土にも基本用土の黒土(畑土など)を多めにします。また軽石は多孔質で保水性と通気性があり軽いため、大型のコケの場合は手入れの目土として使うこともできます。

ほふくするコケの目土の調整
ハイゴケ、シノブゴケ、アオギヌゴケなどほふくしたり横に広がる苔は、土と定着しにくいものが多く、採取するときでも簡単に剥がすことができます。このような苔は移植間もない頃は土への密着が難しく、強い風に飛ばされたり、雨で流されます。このため目土には重石のように苔が移動させず安定するような役目が必要になります。これらの苔は土をあまり必要としませんから基本用土の黒土は少なめにし、重たい川砂と繊維質のピートモスなどを多めに混ぜるようにします。
ハイゴケは横に伸びるため量が多いと苔が隠れてしまいますので薄めに行います。厚く入れすぎると生育を阻害することもあります。分量は苔丈の1/2ぐらい。フルイを使って適度に乾燥した土をまくと簡単です。苔の上に残さず中にはいるように手でならしてやります。何回か水をまくと苔の中に土が入り安定しまする

スナゴケの目土の調整
スナゴケは名の通り砂地を好み、開けた川原や砂のたまった石の間などによく見られます。その場所の土は砂単体ではなく、少し粘りのある土が含まれています。砂だけの土では流動性があり植物にとって安定しないためです。スナゴケの植え付け時の目土調整には、標準目土に川砂を30%程度追加すると良いでしょう。手入れ(管理)の目土入れでは砂砂単体を薄くまいても大丈夫です。

小型のコケの目土の調整
目土は標準目土でとりあえず問題はありません。小型のコケは分量が少なくなります。多すぎてはコケが窒息しますし、軽石のような粒の大きな物も使えません。少ない量を丁寧にまいてやります。
小さなコケは大型、中型のコケに比べて生育する場所をとくに選ぶ傾向があるように思えます。例えば山苔は杉や檜の根元によく見られますし、ギンゴケはブロック塀や道ばたに生育します。杉などの根元は雨が当たらず比較的乾燥しており、陽の当たらない日陰になります。このようなコケには保湿性のある用土は控えた方がよいかもしれません。ブロック塀はアルカリ性でこのような場所好むコケには鹿沼土やピートモスのような酸性土は控えた方がよいかもしれません。しかしいずれも小さなコケですからその目土の分量も少なく、標準目土でも決定的な欠点にはならないでしょう。




スギゴケに軽石で目土

スギゴケに標準の目土

大型のコケに適しています