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特講 はじめに


特講について
はじめに
 苔は湿潤地の日陰で育つ植物というイメージがあります。海外ではきわめて下等な隠花植物として嫌われ取り除かれてきました。その苔を庭園に利用するのは日本だけの様式で、古くから庭園の発展とともに使われてきました。苔は他の庭園植物とは性質が著しく違います。根はなく、あっても(仮根)水分や栄養は吸収できません。乾燥でひからび、寒さに凍結しても枯れないなど、生育や繁殖方法は、普通の木や草とは違います。これを庭園の主要素材として利用し評価した日本人は一つの見識を持っていたといえます。

古来より苔とつきあってきた日本人ですが、園芸素材としてはそれほど一般的な植物ではありませんでした。学術的な専門書はあっても、園芸書となると造園書籍の中で簡単に説明されているぐらいでした。近年は苔玉ブームや、テラリウム、苔ボトルなどで注目を集めたことで、書籍も数多く出版されていますが、「こうすれば苔植物は簡単に育てられる」というような決定的なマニュアルはまだありません。

「簡単に育てられるマニュアル」のようなものがないのは、日本だけでも1700種という種の多さにあるのかもしれません。苔やシダを除いた日本の高等植物が6500種ですから、1700種は大きな植物群といえます。日本は南北に長く、海に囲まれ高山があり多雨で、多様な環境があるためコケの種類も多くなったのでしょう。またその生育環境は多様です。高山性、低地で育つ苔、湿潤地、乾燥地を好む苔、耐陰性、好日性からアルカリ性を好む苔、強酸性でも育つ苔や南極で育つ苔まであります。それぞれの特性はあまりにも多様であり、簡単なマニュアルなどで説明できないと考えるべきです。

こう説明されると、苔園芸にかなりやっかいな印象を持たれるかもしれません。しかし古来日本人が利用してきたコケの種類はそれほど多くはありません。せいぜい数十種類、定番と言われる苔でも20種類程度ではないでしょうか。日本人は鬱蒼とした山奥から珍しい苔を採取し栽培してきたわけではなく、里山や人家の周辺で普通に見られる苔を利用してきました。これらの苔は鬱蒼とした森の中ではなく、林の縁やあぜ道、土手など比較的明るい場所を好み、また乾燥にも強い傾向があります。定番と言われる苔には入手しやすく育てやすいという共通点があります。

特講では定番の苔を取り上げていきます。もちろん市街地や郊外、温暖な地域と寒冷地では栽培方法も工夫が必要になります。特講ではそのヒントになればと考えています。



上の画像は福岡の苔寺 光明禅寺