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管理 − 苔の殖やし方 - 移植法
苔の植え付け方法

苔を植え付ける方法にはまきゴケ法、移植法、はりゴケ法の三つの植え方があります。移植とは苔の小さな塊を植付けるもので、庭や育苗箱、岩の窪みになどへの植え付けに適しています。まきゴケとはほぐしたコケを種のようにまいて殖やす(無性生殖)もので、時間と手間は掛かりますが、均等なマットを造り、少量のコケで殖やすことができ、小型〜中型のコケに適しています。はりゴケとはマット状に剥がしたコケをそのまま庭や培養土などにはるやりかたです。きれいな苔のマット、或いは塊を崩さないように別の場所に植え替えるもので、移植時の仕上がりが美しく、庭造りでは一般的な方法です。いずれの植え付け、管理に共通していることは、風や雨、散水による水圧などで、コケが剥がれたりして移動させないことと、安定した湿度を保つことです。環境が変わることから移植後に変色をおこすことがありますが、多くは回復し、新芽も伸び始めます。

画像は化粧砂(抗火石を粉砕)を入れたコップにピンセットでコウヤノマンネングサを移植

基本的な移植法・スギゴケ
      (コスギゴケ、タチゴケも同じ)

苔は一本が独立して生えているのではなく、たくさんのコケが集まって小さなコロニーうあ大きな群落を作っています。移植法に適しているのはスギゴケやヒノキゴケのように立ち上がるような比較的大型なもので、林の中の腐葉土質の土に生えるような苔です。コケは土が付いたまま適当な塊にして培養土もしくは露地に植え付けていきます。まきゴケのように植え付けてから風雨に流される心配が少ないことと、はりゴケほどはたねゴケを使わないのが長所です。しかし広い面積への植え付けは手間がかかることと、密生するまでには1年から3年ぐらいはかかります。
ここでは露地(庭等の地面)へのスギゴケの移植を簡単に説明します。
・まず雑草が茂っているところに移植するときは、数週間前に除草剤で根まで枯らしておくようにします。除草剤は土に残留しないものを使います。
土は良く耕し、雑草の根なども取り除いておきます。土の団粒(土の粒))が小さく、水はけが悪く乾燥すると固く締まるような土は土壌か利用が必要です。元々は林の腐葉土質の土に自生するような苔ですから、時間があれば前もって腐葉土を混ぜるなどの土作りをしておくと良いのですが、間際に改良用土を混ぜても十分に効果はあります。細かく粉砕された、ピートモスなどは代表的な改良用土です。樹皮培養土もコケとの相性が良いのですが、用土と混ざりにくいため使うときは充分に混和してください。これらは土を軟らかくし保水性がよくなります。また川砂や鹿沼土細粒、赤玉土細粒、軽石砂(5mm程度)を混ぜることで排水性が増し、バランスの良い土ができます。植え付け場所の土はレイキなどで平らにならします。・コケは一握り程度の塊にします。軟らかくなった土にコケの塊を差し込むように植え付けていきます。コケの丈の長さによって塊の大きさ(コケの本数)も違ってきます。10cm以上の丈の長いスギゴケの場合、植え付けて目土入れをすると広がりがでるため本数も少なくできますが、丈の短いスギゴケは大きめの塊を植えるか、間隔を狭くして植えるようにします。少し間隔を開けて植え付けていきます。
・ 目土は標準的なものか或いは少し黒土を多めにします。コケを倒すように広げて、半分ぐらいが隠れる程度に均等に目土を撒きます。


土の付いたスギゴケマット


植木鉢への植え付け例


コケを広げるように倒して目土入れをする。

スナゴケの移植

スナゴケは長さが1cm〜4cmぐらいの中型で、崩れやすいため、移植法よりはまきゴケかはりゴケに適しています。移植法で使うならば丈の長い苔が適しています。培養土などはまきゴケと同様です。

ハイゴケの移植法
(シノブゴケも同じ)

ハイゴケやシノブゴケは採取しても土が付かないため、土に埋め込むような移植法には適していません。移植法よりはまきゴケかはりゴケに向いています。

コウヤノマンネングサ・フジノマンネン・ヒノキゴケの移植

スギゴケ同様いずれも大型のコケで、はりゴケやまきゴケよりは移植法に適しています。スギゴケよりは日陰から半日陰を好み、比較的湿潤な場所、腐葉土質の柔らかい土によく自生しています。山取で採取したヒノキゴケの多くは、生育環境が変わったことで茶色く変色することが良くあります。変色した葉が回復するのは難しいかもしれませんが、しかし移植して30日ぐらいすると新しい芽がポツポツ見られ始めます。
・育苗箱に培養土を入れ表土をならしておきます。標準の培養土に充分に粉砕した腐葉土を混ぜると良いでしょう。これらのコケは土の中から新芽を旺盛に伸ばすため、培養土も通気性の良い土作りをしてください。
・ヒノキゴケは10〜20本ぐらいをひとかたまりにします。コウヤノマンネンやフジノマンネンは葉と茎、それに地下茎を付けて差し込みます。
標準の目土で目土入れをします。大型のコケなので目土の量は多めになります。

コウヤノマンネングサ

ヒノキゴケ・植え付け20日目ぐらいで変色してくる。

変色した苔から新しい芽(植え付け30日頃)

山苔の移植

山苔はアラハシラガゴケ、ホゾバオキナゴケ、オオシラガゴケなどの小型のコケです。小型のコケなのでまきゴケに適しているのですが、山苔の特性として、半球状のコロニーを作るのには移植法が適しています。まきゴケでは最初の発芽は早いのですが、均等なマット状に密生し、半球状の厚みが出るのには相当の年月がかかります。移植法では小さな塊が徐々に広がりながら半球状に生育するため、順調ならば2〜3年で小さな半球状のコロニーに生育します。
・移植法ではたねゴケ(山苔)を2〜3cmの塊にします。
・育苗箱に標準的な培養土を入れ表土に樹皮培養土を混和させるか、薄く広げておきます。山苔は杉や檜の根元の樹皮に良く自生しています。このため杉や檜の樹皮を粉砕した樹皮培養土は山苔との相性も良く、是非用意したい基本の用土です。
・苔の塊を軟らかい土に差し込むように植え付けます。しかし小型の苔なのであまり深く差し込むことはできません。厚みのない物はぎゅっと押しつけるようにします。厚みのあるたねゴケはピンセットで少し深く差し込みます。
・薄く目土(標準の目土)をいれます。目土入れは苔に掛けるのではなく、苔の周りを囲むように土入れをします。こうすることで苔が安定しあまり動かなくなります。小型の苔なので苔に直接かかってしまうと蒸れを起こす危険もありますので、丁寧な作業をしてください。
・散水するうちに目土が流されるようなら薄く加えるようにします。シラガゴケの仲間は杉や檜の根元のような日陰で雨の当たらない乾燥したところを好みます。このため栽培するときの水やりも徐々に少なめにし、乾燥気味に育てるようにすれば生育密度のよい半球状に育ちます。密度の薄い苔に育つ原因は水のやりすぎです。

半球状の断面

ピンセットで差し込む


植え付けて28ヶ月目ぐらい。あと一年ぐらいでマット状につながります。

コツボゴケ、シッポゴケなど移植

比較的湿潤で日陰を好むコケは、半日陰で乾燥に注意してやれば良く育つものが多いようです。ここでは普通に里山などで見られるコツボゴケで移植法のやり方を説明します。
コツボゴケは大型のコケであかるい半日陰地の湿潤なところに普通に見られます。横にほふくするように広がり、比較的早く密生し育てやすいコケです。たねゴケは根元をしっかり持って、ほぐすように強く引っ張って分けていきます。
・育苗箱に標準の培養土を入れ表土をならしておきます。根元を土に差し込みますが、杉苔のようなまとまりがないため深く差し込むのは難しいかもしれません。この場合は根元を割り箸かピンセットで挟んで土に差し込むと簡単です。
・薄く目土(標準の目土)をいれます。散水するうちにたねゴケが露出するようならば目土を加えます。湿潤を好むコケは乾燥に注意すれば良く育ちます。



移植法でのコウヤとコツボゴケ、シッポゴケのミニテラリウム