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土以外の基盤

■発行番号 ■発行日2012.02.13



■自生する苔を観察すると、スギゴケのように土に育つ苔もあれば、倒木や岩の上、コンクリートの壁面や河原、樹皮や木の根元に育つなど、いろいろな素材のうえで苔は生きています。
  屋上緑化や壁面緑化が注目されています。多くの企業が苔を定着させる基盤を開発されています。ここでは土以外の基盤について苔の定着を試してみました。

苔は土が無くても育てられるが・・・・基盤の要件

苔植物は栄養や水分を吸収するような根はありません。空中の水分を吸収して光合成で育つので、体を固定する媒体は選ばない、というのが理屈です。しかし自生する苔を観察すると、スギゴケのように土に育つ苔もあれば、倒木や岩の上、コンクリートの壁面や河原、樹皮や木の根元に育つなど、苔それぞれに決まった場所を選んでいるようです。       ひとつの人工的な基盤にこれら全ての要件を満たせることはできません。ハイゴケのようにほふく性の苔には苔が這って生育できる構造が必要ですし、スギゴケやヒノキゴケのように大型で直立する苔は,苔が固定できるような構造の基盤になります。複雑で高額な開発費が必要なわけではありません。右の画像は軍手からスギゴケが芽を伸ばしたものです。軍手にスギゴケが付着し、脱ぐときに裏返しになった軍手を放置して置いたものです。軍手の中から芽を伸ばし、スギゴケがしっかり固定されたことと、軍手が安定して湿っていたため2ヶ月ほどで育ちました。これをアイデアに、軍手苔玉を提案したことがあります(苔園芸コツノコツ・農文教)


ほふく性の苔のための基盤要件
           

         

ほふく性の苔ではハイゴケ、シノブゴケが一般です。土手や畦の芝や草に絡ま
るように群落を作り、茅葺き屋根にもよく見られます。少し多孔質な岩なら、
しっかりと体を固定して育ちます。風や雨で流されないよう体を固定できるも
の。例えば繊維質のシュロの皮とか、多孔質な基盤が適しているようです。黒
土や畑土の上ではどうしても育たないようです。

右の画像は粉砕したハイゴケを蒔いて3ヶ月の抗火石です。抗火石は東京新島とイタリアで産出される石で、石英粗面岩に属し、鉱物組成の多くは 火山ガラスからなります。多孔質で軽く、加工しやすいこと。排水性と保水性、保温性があり、苔の定着やラン、山野草の鉢として、また微生物による浄化濾材にも適しています。吸収した水分を時間を掛けて放出してくれるので苔との相性がとても良い石です。抗火石の特性をいかした基盤は次です。
抗火石の加工について・・・・切断には糸鋸、表面は粗い紙ヤスリで削れ 溝や窪みはノミや棒ヤスリ、
太い釘などを使います。平らな鉢底の加工には、ブロックやコンクリートに押し当てて削ります。

多孔質な基盤

細かな石材を圧縮成形したものです。重さはありますが芝や草の根が仲間でしっかり入り込みます。ほふく性の苔や山苔のような小型の苔が良く定着しました。

穴の開いた基盤

多孔質とは少し違いますが、穴は裏と表でつながっていますが、ストレートに開いているのではないため土を入れることができます。直立する中型の苔に適しています。    30cm×30cm×1cm

繊維質の基盤

この基盤はホームセンターで市販されているもので、シュロの皮のような繊維の中にピートモスが詰められています。30cm×30cm×5cm程度  画像はハイゴケマット。

レンガ
レンガにほふく性の苔を定着させました。左はシーリング剤を塗って粉砕したハイゴケを蒔きます。右はケト土に粉砕したシノブゴケを混ぜて塗ったレンガです。レンガはそれほど多孔質で無いためあまり保水性がありません。湿度の安定した場におくのがコツです。

素焼きの植木鉢

ケト土に粉砕した山苔を混ぜ素焼きの熊と植木鉢に塗ったもの。保湿容器に入れるなど湿度を安定させると意外と早く発芽します。  また素焼きの植木鉢の穴をふさぎ(シーリング剤が便利)、鉢の周りに同じように苔を混ぜたケト土を塗ります。この鉢に水を入れて雨の当たらない場所に置いておきます水が浸みでて土が乾かないので苔が育ちます。保湿容器など必要はなく簡単に一面苔の生えた鉢ができあがります。お客様から教えていただきました。

ハリガネで括る
スナゴケを丁寧にステンレスの針金で括ってマットにした物です。使っている素材はスナゴケと針金だけです。スナゴケをマット状にすることで土が無くても保水性があります。画像は鉄板の屋根に置いて生育状況を観察したときの物です。この商品は市販されたもので、成田空港に納品しました。右画像=南ウイング

大谷石

大谷石は多孔質な石材で軽石凝灰岩のひとつで、栃木県大谷町一帯で
採掘されます。植え付けに適当なサイズに切断してもらい、シーリング材で
ハイゴケを定着。2年ほど栽培した物です。

ハリガネで括る

屋上緑化や壁面緑化のための基盤はいろいろと開発されているようです。基本的に共通しているのは保水性と軽さです。屋上緑化ではスナゴケのエゾスナゴケが多く使われています。エゾスナゴケは好日性で直射光が当たっても乾燥していれば枯れず剛健です。エゾスナゴケの欠点はどちらかというと高山性(寒いところが好き)であることと、丈が伸び続けることです。屋上や壁面緑化ではコバノスナゴケの方が適していると思われますが・・・