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ヒノキゴケの植付け


                        自生地のヒノキゴケ

■■・・・環境の変化に弱く、移植後に変色しやすい
大型の苔は湿潤な日陰地の安定した環境で時間をかけて生育したものが多く、植え替えなどで環境が変わると極端に葉色が悪くなることもあります。苔植物は根から水分は吸収せず、空中の水分を吸収して育ちます。このため土が充分に湿っていても、空中の湿度が低いと、いくら水を与えても変色を起こします。特に空調の効いた室内での栽培は難しく、ベタ掛け材などで覆うなどの対策が必要になります。


@ ヒノキゴケの植え付けのコツ = 移植法          
  葉や茎を細かくしてたねゴケにする「まきゴケ」はヒノキゴケでもできますが、大
型の苔は発芽してから育てて群落を作るまでにかなりの日数がかかり、その間の
管理も大変です。

ヒノキゴケのような大型の苔は、たねゴケになる親株を植えて、そこからの新芽を
育てる方が早くきれいな群落に育ちます。親株を植え付けるやり方を移植法と
言います。

自生するヒノキゴケは小さな株(コロニー)が生育してやがて大きな群生を作りま
す。植え付けも小分けした株を移植し、これが群生するように育てていきます。
株と株の間は密生しないよう間をあけます。蒸れを起こさないよう通気性をよく
し、新芽にも光が当たるようにします。


A 植え付けの時期

最低気温が10度くらいになれば苔は旺盛に新芽を伸ばし始めます。春ならば3月下旬くらいから6月くらいまで。秋は9月から10月くらいまでが適期です。しかし新芽は植え付けて一ヶ月目くらでようやく小さな芽を出します。暑さ寒さが厳しくなる前に、小さな芽を少しでも育てておきたいので、早めの植え付けがお勧めです。
画像は親株から伸びた新芽

B 親株は変色しやすく回復は困難
  ヒノキゴケのように大型の親株は、植え付けてまもなく葉先から変色しまうことがあります。安定した環境下で、長い時間をかけて大きく育った親株は、乾燥や日照などの小さな変化にもなかなか適応できないようです。

 植え付けた苔はできるだけ良い状態を長く維持させ、できれば大きく育てたいところですが、多くの場合、親株は変色をおこし、これを回復させるのはかなり大変です。

 大型の苔全体が一ヶ月ぐらいで赤くなると、植え付けが失敗したような気分になります。大型の苔を育てるむずかしさがここにあるのですが、実はここから苔の栽培が始まります。

ヒノキゴケは親株を大きく育てるのではありません。親株から新しい芽を育て、これを環境に適応できるように育てます。          

圃場のヒノキゴケポット商品
たねゴケを植え付けて30日目ごろ
赤くなった親株

C赤い親株から新芽を育てる
植え付けて赤くなった親株は、実は枯れたわけではありません。環境に適応できず色が悪くなっただけで、大型の苔では普通に起きることです。まず乾燥させないよう水やりは続けてください。

右の画像はヒノキゴケポット。植え付けて30日〜60日に根元を撮影したものです。乾燥させずに水やりを続けることで無数の新芽が育ち始めています。

ヒノキゴケの芽は、葉先よりも茎から旺盛に伸びるようです。このため粉砕した葉を撒く「まきゴケ」よりも、親株を植え付ける「移植法」のほうが、容易で確実だと考えます。




D 自生地の観察 栽培のための培養土


ヒノキゴケの庭園
石川県小松市 苔の園
自生するヒノキゴケは沢の斜面や、川の近くで湿地の腐葉土上に群生を作ります。湿度や土壌の水分は高く安定しています。自生地の土は腐葉土が多く含まれているため、培養土にも腐葉土を使いたいところですが、じつはヒノキゴケに腐葉土はあまり適していません。 自生地の腐葉土は枯葉だけでなく、杉や桧などの大きな枝が絡んで大きな隙間があり、通気性があります。市販の腐葉土は重なって濡れると通気性が無く重くなります。これでは小さな新芽が表土から頭を出すこともできません。ヒノキゴケの用土はまず大粒で軽いこと。通気性があって適度な保水性が求められます。

E 用土作り
  苔の標準用土(目土)にバーミキュライト、パーライト、軽石などを加えて調整します。苔の用土、目土の詳細は特講・用土カタログ特講・苔目土の作り方を参考にしてください。                            
※苔目土・・・苔目土とは植え付けた苔に土を薄く撒きます。表土の乾燥を防ぎ、日照から苔を守ります。

 大型のコケの用土・目土
        黒土(または消毒した庭土、畑土)・・ 30%
        川砂(または山砂)・・・・・・・・・・・・・・・ 10%
        ピートモス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20%
        つぶ軽石・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20%
        バーミキュライト・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10%
        赤玉土、または鹿沼土(挿芽用)・・・・ 10%

F 植え付け手順


園芸バスケットで育てたヒノキゴケ
露地植もプランターや挿し芽箱に植えるのも作業手順は基本的に同じです。プランターや育苗箱は移動や遮光などで管理のしやすさにメリットがあります。
用土は黒土や庭土単体よりは川砂、腐葉土やピートモス、バーミキュライトなどを混ぜて通気性、保水性のある土を作ります。腐葉土が多いと通気性が悪くなります。苔は小さな植物ですから、熟成した腐葉土を使って下さい。
 ヒノキゴケ10〜20本ぐらいを一株にします。これを半分くらい土に差し込んでいきます。株と株の間は4〜5cmくらいあけるようにします。

目土入れ
株は上から押さえて広げ、寝かすようにします。この上からヒノキゴケの頭が少し出るくらいに軽く苔目土を施します。
ポイントは通気性の良い用土に深めに植え、目土をして露出部分を少なくします。
  
@軽く、保水性、排水性バランスの良い土を用意
A10〜20本程度のヒノキゴケを束ね、根を少量の樹皮培養土で包む。(保水力)
B3〜5cm穴を開けてAを植える。
C葉を寝かすように倒す。
D苔の頭が出る程度に目土を被せます。目土は軽く通気性の良いこと
E表土を乾燥させないよう水やりを続けます。一ヶ月ほどで新芽が出てきます。


G 発芽・管理
ヒノキゴケは湿潤を好む苔なので水のやりすぎの心配はありません。たっぷりと水やりをして下さい。乾燥した場所では親株の葉は一ヶ月ほどで褐色化してきます。変色しても枯れたわけではないので用土は乾かさないよう水やりは続けます。置く場所は明るい半日陰で風通しが良いところ。直射日光は当てないようにします。         

植え付けのメリット・厳しい環境で育てた苔は丈夫


1〜3年でしっかり繁った株、コロニーに育ちます。長い時間を掛けて育った苔は、その場所に適応しており、丈夫な苔です。

画像は黒いポット植えしたヒノキゴケ・丸ポット商品。
よほど乾燥しない限り散水はせず、2年以上掛けて降雨だけで育てています。左上はコウヤノマンネンゴケ・丸ポット